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万葉集巻十二は歌の作り方の「虎の巻」~札幌で「いにしえの日本を探る」講座

月岡先生小 国学院大(東京)、国学院道短大(滝川)の研究者が古典文学や歴史の魅力を語る教養講座「いにしえの日本を探る」が1月21日(土)、札幌の北海道新聞社(中央区大通西3)で開かれました。同短大の月岡道晴教授が「万葉集巻十二を読む-『作者未詳』から『詠み人知らず』へ」と題して講演し、ぶんぶんクラブ会員約140人が熱心に学びました。

万葉集巻十二は作者表記のない巻の一つで、収録歌は全て短歌です。巻十一と巻十二は兄弟関係にあるそうですが、「巻十一に良い歌が取られた残りカスが、巻十二。でも、残り物の巻十二に価値がある」と月岡教授はいいます。

巻十二の収録歌を見ていくと、他の歌と類似した表現を使った歌(類歌)が沢山出てきます。
例えば
  念(おも)ひやるたどきも我は今は無し妹に相はずて年の経行けば(巻十二 2941)

  虚蝉のうつし情(ごころ)も我は無し妹を相見ずて年の経去けば(巻十二 2960)

  健男(ますらお)の現(うつ)し心も吾は無し夜晝(よるひる)と云はず戀ひし度(わた)れば(巻十一 2376)

2941歌と2960歌は後半が、2960歌と2376歌は前半が似ています。
月岡教授は「昨年末から流行した『PPAP』のような構造。一つ目と三つ目を『オーッ』と足すと、真ん中の歌が出来る」と解説しました。

月岡先生会場小 自らも歌人である月岡教授は、類歌が多い点について「似ている歌をあえて載せている。『歌の種』を共有しながら、少しずつ変えることで、全く違う世界になる。こんな風に歌を作ることができるよ、と見せてくれている『虎の巻』。現代の歌を作る人にも参考になる」と述べました。

時代が下って、平安時代に編まれた古今和歌集の「詠み人知らず」に、巻十二の歌が受け継がれているそうです。月岡教授は「『歌の種』が古今集の『詠み人知らず』に流れ込み、やがて意識的に前の歌を取ってきて自分の歌にしていく『本歌取り』につながった」とまとめました。