ぶんぶんクラブおすすめの一冊 - 北海道新聞社の本
さわこのじてん
今美幸・今佐和子著、A5変型判、160ページ、定価1650円
2019/08/19

本のご紹介
北海道新聞の読者コラム「いずみ」への投稿をきっかけに生まれた本です。
「重い障害のある娘と、どうにかして言葉を交わしたい」と母は願いました。脳性まひによる肢体不自由と聴覚障害のある娘のために、日常生活で使う単語から、「好き」「つまらない」という感情を表す言葉までを手づくりの本に。
伝わる喜びをのせた言葉がいっぱい詰まった、世界に一冊の「じてん」の物語。
(今美幸・今佐和子著、A5変型判、160ページ、定価1650円)
会員の皆さんからのブックレビュー
- 3年ほど前から、自閉症スペクトラムの女の子Sちゃんの療育をお手伝いしています。ABA「行動療法」を基本として、色や形、物の名前や使い方などを教えています。私がこの療育で大切にしているのは共感です。一緒に楽しんだり喜んだりという経験が、他者との関係を築く上で根っこになるものだし、共感してくれる人がいるからこそ、頑張ることができ、伝えたい意欲がわくと思うのです。
この本を読んで、さわこさんの今があるのはお母さん、先生方をはじめとしてたくさんの共感者がいてくれたからだと思いました。そして伝え合う手段「じてん」を得て、さらに関係が深く、広く、豊かになっていったんだなとエピソードのひとつひとつに感動しました。
Sちゃんの療育は試行錯誤の連続ですが、その試行錯誤も希望への一歩なんだと、元気を出してやっていこうと思えました。Sちゃんの笑顔がこれからも続くよう願いながら。
(氏家 恵子さん) - 「いずみ」で“さわこのじてん”を読んだとき、とても感銘を受け、実際のじてんを見てみたいと思いました。
本の中には、じてんを作ったときのこと、様子などが書かれてあり、障害のある子と関わる上でとても参考になると思いました。お母さん美幸さんの心の動き、何度も諦めない姿勢すばらしいですね。そして伝えること伝わることの喜びが手にとるようにわかりました。
私もこの本に出会えて見習いたいことがたくさんあり刺激をうけさせてもらいました。ありがとうございました。
(ゆうこさん) - さわこさんとお母さん、そして、周りの方たちとの日常の一片を読ませていただき、今とても温かい気持ちです。素敵な本を本当にありがとうございました。「できないこと」を数えるのではなく「できること」に光を当て、「また一から一つずつ片づけていこう」という歩み方に、勇気と元気をもらいました。
(渡部 美穂さん) - 耳が聴こえていても、どれだけ人の言葉に耳を傾けていただろう。そして私は、どれだけ言葉を尽くして人に向き合ってきただろうか。愛らしい装丁の「さわこのじてん」が問いかけてくる。
室蘭の青い海と、車いすのさわこさんとお母さんの笑顔。28年間の歩みに、海は青い日ばかりではなかったはずだ。
だが、読後に残ったのは海の青さと、お二人の笑顔だった。
言葉はわかりあうための手段。その根源は心。心と心が繫がる喜び。この一冊が教えてくれた。
最終章の「希望」でお母さんがさわこさんの障害を医師から告げられ日、さわこさんを試す為に人形をゴミ箱に捨て、2歳のさわこさんが号泣する場面が描かれていた。お母さんはこの日を忘れることなくさわこさんと共に生きてきたのではないだろうか。
(土肥 友子さん) - とても吟味された言葉で書かれていると思いました。
押し付けがましくなく、私の心にスッと入ってきました。
なかでも、「心がボキボキ折れそうだった」「静かな選択」は、お母様の辛さが伝わりました。
そして、じてんのかわいい柄の表紙に込もった「だれかが興味を持って手にとることを願って」という思い、確かに伝わりました。毎日を生きているお母様とさわこさんの姿を思い浮かべて、心の底から力が沸きました。ありがとうございます。
(福井 玲奈さん)