重要なお知らせ

ぶんぶんクラブの会員証を提示してお得なサービスを受けよう!

イベントリポート

樋口一葉「たけくらべ」読み解く 札幌で国学院大講座 

2019/09/19

 本年度1回目となる国学院大(東京)、国学院大道短大(滝川)教養講座「いにしえの日本を探る―樋口一葉『たけくらべ』の子どもたち」が9月14日(土)午後、北海道新聞本社で開かれ、札幌市内をはじめ留萌や白老、苫小牧、岩見沢などから105人が参加しました。

 この日の講師は、国学院大副学長で文学部長の石川則夫教授。5千円札に描かれた肖像画で知られ、24歳で夭逝(ようせい)した明治の作家樋口一葉(1872年5月2日~96年11月23日)の代表作「たけくらべ」を読み解きながら、一葉の世界を紹介しました。

▲たけくらべの作品の背景や作品についてわかりやすく解説する石川教授
▲たけくらべの作品の背景や作品についてわかりやすく解説する石川教授

 「たけくらべ」は、東京の遊郭・吉原を舞台に、遊女の道を歩むことになる大黒屋の美登利(14)と、龍華寺の長男(跡取り)藤本信如(15)の背負った運命ゆえのかなわぬ淡い恋と、その周りの子供たちと間のさまざまな人間模様を描き出した小説。この土地で精一杯生きた人間でなければ書けない重さと、よそ者の新鮮な目で眺めた驚きが交じり合って生まれた作品といえます。

 

 初めに石川教授は、漱石のような英文法にのっとった文章とは異なり、一葉の文体は「古典文学、江戸時代や平安時代の女性文学の文章表現が主体になっています」と説明。「主語がなく、鍵括弧がありません。誰かが自分に語り掛けていくようにして語る『語り手』がいます。語り手の視線に注目してほしい。語り手のまなざしは批判的であり、運命を赤裸々に描いてゆきます」。また、文章は「どこからか会話文がなくなり、どこかで地の文になったりとはっきりしません。これが本来の古典文章なのです。美登利に密着していたら、正太郎になったり、いつの間にか一葉に。この『うつりゆき』が魅力です」と続けました。文章を読んで「言葉を耳で聞き、身をゆだねながら聞き取るのがいい。語りの動きを読み解くのがいいですね」と話しました。

 

 また、当時の吉原遊郭の状況、職種と時代背景のほか、一葉の家族、生い立ちについても地図を使いながら詳しい解説がありました。父則義、母多喜の2男3女の次女として生まれた一葉が、長兄の病死などで樋口家を継ぐことになったものの、則義が事業に失敗。多くの負債を残したまま病死し、自身の婚約も解消となってしまったことや、1893年(明治26年)下谷区龍泉寺町へ引っ越して、荒物や子供相手の駄菓子、おもちゃの小店を開くものの、1年足らずで経営に失敗したことなどが説明されました。龍泉寺町は吉原遊郭の近くで、ここに住みながら、特殊な色町を体験したことなどが、たけくらべの作品の背景にあることが紹介されました。

 

 石川教授は「たけくらべ」を音読しながら、第3章(祭りの計画―表町組)まで、言葉を丁寧に読み解きながら読み進みました。講演時間がなくなり、来年、再びこの先から講演することとし、終了しました。参加者は、石川教授のお話に目を輝かせ、うなずきながら熱心に聞き入っていました。